誰もが理解したいコンタクト

うつ病は人間の歴史始まって以来、古くからある病気です。 しかし、このうつ病が、医学上に定着するまでに長い時間がかかりました。
うつ病を意味するメランコリアという言葉が初めて用いられたのはヒポクラテスによってです。 メランコリアという言葉はギリシャ語で「黒い胆汁」という意味です。

古代ギリシャの病理学では病気は血液や粘液、胆汁、黒胆汁などの体液の間の平衡が失われる結果起こると考えられていたのです。 ヒポクラテスは紀元前四世紀に「恐怖感と憂うつが長い間続くのはメランコリアという病である」と述べています。
わが国の古い医書『神遺方』や『延毒撮要』という書物に、うつ病や反応性うつ病が記載されております。 今日まで医学の歴史上、うつ病の記載はその他にも多数みられます。
このことは人間の歴史の続く限りうつ病はいつも存在していることを示しております。 ところで現代のうつ病、もしくは操うつ病の概念を確立したのは、ドイツ精神医学の代表者クレペリン(一八五六?一九二六)で、十九世紀終わりのことです。
当時のうつ病の概念は重症のうつ病を指していたといえます。 現代では、ずっと軽いうつ病が存在し、治療によって容易に治るうつ病が多く存在することが認識されてきました。
これがいわゆる仮面うつ病です。 また、精神的なさまざまな不安をもつ不安性障害という診断に当てはまると同時に、うつ病にも合致するような、「不安性障害」と「うつ病」の合併した症状を訴える患者さんが多くなったことも、現代のうつ病の特徴といえます。
このような症例は、プライマリケア医、心療内科を初診する場合が多いことも指摘されております。 うつ病と理解されないまま、適切な治療を受けないまま放置されて、症状が進行したり再燃をくり返さないために、早期の発見と早期の治療が大切なのです。
「患者は理由なしに憂うつになり悲しくなって、悶えたり、思考も知覚もいつものようにすっきりせず、疑い、惑い、決断力がなくなるものをいう」と書いてあるのです。 正常の人の気分の落ち込みとうつ病とは何ら質的に異なったところはなく、程度が重い点が異なっているだけと思われます。
うつ病者と正常者の〃落ち込みはどう異怠るか両者には多くの類似性がみられる前章で述べた気分の沈みは、正常の場合にも一時的に起こる、気持の沈んだ状態とどのような点で異なるのでしょうか。 「気分」という言葉は、高揚した幸せな気分から一方では悲しい不幸な気分にまで用いられます。

この気分には、幸せとか悲しみなども含まれておりますが、特にある程度長く続く感情の変化を指しているのです。 不安とか怒りとかいう主観的な気持は、幸せ?悲しみのなかには入らない一時的な感情なので「気分」とは区別することができます。
正常の人たちでも気分の沈んだときや気持の沈んだ日をもつなど、気分の変動があるものだと信じられております。 この確信は正常者を対象としたBとRの一九六六年の研究によっても明らかにされているのです。
正常な人の気分の沈みと、うつ病の人の抑うつ気分とはいくつかの点で類似性があります。 まず第一に、両者の自覚的な訴えは同じです。
用いられる表現も、憂うつ、悲しさ、不幸、空虚、寂しさなどで共通しています。 うつ病の人は適切な表現が見出せず、ふだん使っている言葉を用いるため一見類似しているようにもみえます。
しかし、その悩みの程度は異なっているかもしれません。 事実、わたしのある患者さんは、うつ病期の気分はそうでないときには絶対に味わうことのできない異なった気分だと述べています。
また、ピューリッツァー賞作家のW・Sは、自分のうつ病体験を『見える暗闇』(大浦暁生訳、新潮社、一九九一二)のなかで、「うつ病は神秘的な苦痛を伴い、症状も自分にだけわかってくる神秘なとらえがたいもので、筆舌にあらわすことは不可能に近い。 激しいかたち第二には、うつ病の人の行動は不幸で悲しい人たちの行動とよく似ています。

ことに悲しみに満ちた、沈んでふさぎ込んだ生気に乏しい表情、張りのない、とぎれがちで低い声、そしてどちらかといえば前かがみの姿勢となり、ゆっくりした行動となります。 第三には、身体面にいろいろな自律神経症状が出ます。
くわしくはあとで述べますが、これらの自律神経症状は、日常悲しんだり、不安が続いた人々にもみられることを指摘することもできます。 試験に失敗したり、失業したり、失恋した人たちは、落胆したり、孤独になるばかりでなく、食欲がなくなり、眠れず、疲労しやすくなります。
第四に健康な人が経験する気分の沈みも、ときに良かったり悪かったり程度が変わるもので、うつ病の症状も一日のなかでも良くなったり悪くなったり変動します。 決して、一定の状態が続くのではありません。
この点も類似しております。 このような類似点を考えていくと、うつ病と正常な人の悩みの違いは、ただその程度が病的に深刻であることだけが異なっているといえます。
そのため軽症のうつ病と健康な人の気持の沈みとの区別は、ますますつきにくくなるのです。 うつ病と診断されていないうつ病の患者さんや、医師も患者さん本人も認識できていないうつ病は、予想以上に多く存在しているとわたしは想像しています。
それを体験したことのない者には、ほとんど理解できない。 誰もが時折味わう日常生活の一般的ストレスと結びつけている陰うつな気持ち、ふさぎ込みが破局的な形のときの状態は、こうしたなじみ深い処理できる憂諺の気持をはるかに超える落ち込みだった」と記載しておりま病気か病気でないかの区別がむずかしい現代の操うつ病の概念を確立した有名な精神医学者であるKは、うつ病に何か生物学的な病気の原因を想定して、正常とはっきり区別できるものと考えました。
しかし、うつ病がどうして起こるのか、うつ病の人の悩みと正常の人の気分の落ち込みとは同質なもので、ただ程度が異なるのみであるか否かは、研究が進んでその原因が明確になるまでは答えは出ないのです。 しかし、両者を区別することは治療上非常に大切なことですから、一応区別しております。
つまり体温にたとえてみると、三七度は一つの目安で、それ以上なら即異常、それ以下なら即正常というわけではありません。 人によっては三七度以上でも正常ということがあります。

体温の高低は個人差があって、即その人の健康度を示すものではないのです。 正常の悲しみとうつ病とは、ちょうどその現象と似ています。
正常の悲しみとうつ病の悲しみの相違点。 悲しい出来事の直後から起こる数週間以上に及ぶことは少ない。
回復の過程で悲しみの体験を心理的に受け入れることができる。 悲しみの体験が誰にもわかるし,理解できる悲しみの原因となる出来事が起こった後,少しおくれて悲しみが始まる数週間から1年以上続く悲しい出来事を受け入れることができない。
悲しみの体験は主観的,自覚的であり周囲がわかりにくい。 うつ病の患者さんの数は、かぜをひく人と同じくらい多いのです。
あなただけがかかる特別な病気ではありません。 うつ病の診断と治療には、早期発見・早期治療が最も大切なのです。
うつ病の皐期発見のためにその理由は二つあります。


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